リスケの期間を設定する際に知っておくべき6つの事
コロナウイルスの影響によって、売上が減少し赤字が続いており、資金繰りも苦しくなってきている。
このままだと資金ショートを起こす可能性がある。
返済を止めるリスケという方法は知っているが、どのくらいの期間リスケをしてもらえるのかはわからない。
業績をすぐに回復させるのは難しいため、できる限りリスケの期間を延ばしたい経営者も多いだろう。
そこで本日は、元銀行員がリスケをどのくらいの期間できるのかをご説明していく。
弊社が、実際にクライアント様にお伝えしている内容をご説明していく。
1.リスケの期間について
まず、リスケの期間についてご説明をしていく。
1-1.リスケは半年ごとの期間で見直していく
リスケをする場合は半年ごとの期間に設定することが多い。
例えば、リスケを令和3年3月から開始したとすると、リスケの期間は令和3年8月までとなることが多い。(半年間)
上の事例でいうと、令和3年9月からは通常返済となってしまうため、再度、リスケが必要な場合は、リスケの交渉をリスケ期限の1ヵ月程度前からすることになる。
なぜ、半年の期間のリスケとなるのかというと、銀行が業績に応じてなるべく早く通常返済に持っていきたいからである。
リスケの期間を初めから2年や3年に設定してしまうと、その途中で業績が回復してもリスケをしたままになってしまう。
銀行からしたら業績が回復したのに、返済をしてもらえなくなるリスクがある。
リスケをした場合、銀行は貸倒引当金を通常に返済している場合よりも多く積まなければいけない。
そのため、銀行としてはできるだけ早くリスケを通常返済に戻してもらいたいのである。
なので、リスケをする場合は半年程度で期間を区切って、半年ごとに通常返済に戻す交渉をしていきたいのである。
銀行によっては、1年のリスケ期間をとる場合もあるが半年の方が一般的に多い。
私が実務上で1年間のリスケに応じてもらっているケースもあるが、その事例は、銀行が保証や担保で100%保証されており、銀行に全く損失が発生しないケースに限って、1年でのリスケに応じてもらっている。
私も銀行員時代経験があるが、リスケの申請を半年で区切った場合、年2回申請をする事になるため、申請書の作成に手間がかかることになる。
銀行としたら利益が出ないリスケの申請書作成に銀行員の人件費をあまり使いたくないため、銀行に損失がまったく発生しない融資先に関しては、リスケの申請をする銀行員の時間を効率的に使ってもらうために、1年にする事がある。
ただ、実務で実際に動いている私の個人的な意見で申し上げると、半年間で業績報告にいき銀行と密な関係を構築し、銀行も巻き込んで経営再建をしていった方が、経営再建が格段に上手くいく。
1-2.半年間のリスケでは通常返済に戻せない場合
では、半年間のリスケで通常返済に戻せなかった場合はどうなるのかというと、引き続きリスケの交渉をすればリスケの期間を延ばしてくれることが多い。
ただ、リスケの期間を延ばす代わりに「金利を上げさせてほしい」や「担保を入れてほしい」などの条件を提示されることが多い。
リスケの期間を延長するごとに金利を上げられることもあるため、条件の交渉はしっかりする必要がある。
リスケの再交渉は、リスケ期間満了の1ヶ月前くらいから始める必要がある。
リスケの期間は半年ごとの期間で見直されることが多いが、リスケをするために不利な条件を飲んでしまうと余計に資金繰りが苦しくなることがあるため、できないことはしっかりと交渉することが重要である。
交渉方法についてはこちらの記事「リスケの交渉を成功させるために知っておくべき5つのこと」の3.有利な条件でリスケをする交渉術を参考にしてほしい。
1-3.リスケの期間を延ばす場合、業績に応じて返済をしていく
リスケの期間を延長すると、業績が少しでも回復していれば返済を増額してほしいと銀行から言われることが多い。
業績が回復したかどうかは、試算表や決算書の利益の額から判断される。
そのため、リスケの期間を延長するタイミングでは試算表や決算書は準備しなければならない。
リスケの期間を延ばす場合は、業績に応じて返済額を設定する。
1-4.リスケの期間は延ばせても、ずっと返済額ゼロは認めてもらいにくい
リスケの期間を何度も延ばすことができたとしても、ずっと返済額がゼロのままは銀行も認めてくれないことが多い。
これは、業績が回復していなくてもリスケの期間が1年くらいなると「返済額ゼロはやめてください」と銀行から言われることがある。
これはいつまでも返済額ゼロのリスケをすると、銀行側に返済の意思がないと思われるためである。
ただ、業績が回復していないのに返済額を大幅に増額してしまうと資金繰りは悪化して最悪倒産してしまうので、まずは返済額1万円のリスケで交渉し返済の意思はあるが今は苦しくてこの金額が限界であるということを、資金繰り表を作成し銀行側と交渉する必要がある。
資金繰り表の作り方についてはこちらの記事「【エクセルのフォーマット付き】初心者でも1日で資金繰り表の作り方がわかる6つの手順」で詳細に説明しているので参考にしてほしい。
1-5.リスケの期間は返済ができるようになるまで延ばす事も可能
では、「リスケの期間はいったい何年までできるのか?」というと、業績が回復して返済が通常返済になるまでリスケを認めてもらえる場合もある。
ただし、銀行の方針が途中で変わり、サービサーに債権を売却されたり、保証協会に代位弁済される可能性もある。
サービサーに債権を売却されたり、保証協会に代位弁済されれば自宅や工場などを売却しなければならなくなることもあるため、リスケをいつまでも延長してくれるからといってリスケ慣れしてはいけない。
代位弁済についてはこちらで「保証協会に代位弁済になった場合のメリットとデメリット」で詳細に解説しているため、ご参考にしていただきたい。
1-6.リスケをしている期間に売上と利益を回復させることが一番重要
リスケの期間を延ばしてもらっている間に、売上と利益を回復させることが一番重要となる。
リスケはあくまで一時的な止血処理のため、本業の業績が回復しなければ永遠に通常返済に戻すことはできないからである。
リスケをしている期間中に資金が足りなくなった場合、銀行から融資をうけられる可能性は低いため、高金利のノンバンクや売掛金を現金化するファクタリング業者などに頼ってしまう経営者の方も多い。
ただ、そうなれば、ノンバンクの利息やファクタリング業者の手数料は軽く年換算して10%程度を軽く超えるため、利息や手数料が増加しさらに資金繰りを圧迫することになる。
よくあるパターンは高金利の借金に手を出ししまい、借金を返済するために借金を重ねて、最後には首が回らなくなり破綻してしまうという流れである。
なので、リスケをしている期間に売上と利益を回復させる事が本質的に最も重要な事となる。
コロナの影響で、売上と利益が減少してしまっているのであれば、コロナ禍でも売上と利益を出せるようにしていく事が必要な事である。
まとめ
リスケをする場合の期間は、半年で見直されることが多い。
1年のケースは稀なケースである。
半年間でリスケを通常返済に戻せない場合は、再度交渉すれば、リスケの期間を延長してくれる場合が多い。
ただし、金利の引き上げや担保の追加などの条件を提示される場合がある。
リスケの期間を延ばす場合でも、業績が回復した場合は、随時、返済額を増額していく。
また、返済額ゼロでリスケの期間を延ばし続けるのは難しいため、業績が回復していない場合は1万円で返済するよう交渉する。
リスケの期間を毎回延長してもらえることもあるが、銀行の方針が変わりサービサーに債権を売却されたり、保証協会に代位弁済をされ、自宅などを手放さなければいけなくなることもあるため、注意が必要である。
そのため、リスケをしている期間に売上と利益を回復させることが最も重要な事となる。
田烏武
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