暫定リスケ終了後でもリスケをするために必要な3つの事
暫定リスケという言葉を聞いたが、どうゆう意味なのかわからない。
そこで、本日は元銀行員が暫定リスケの意味と、暫定リスケが終了した後の対処法をご説明していく。
弊社が、実際にクライアント様にお伝えしている内容をご説明していく。
1.暫定リスケとは
まず、暫定リスケとは2013年3月に金融円滑化法(モラトリアム)が終了する際に抜本的な経営改善が難しいリスケ企業に対して、2016年3月までの3年間、収益回復のための猶予期間を与えたものである。
リスケ企業の多くはすぐに業績の改善は難しいのではないかと考えた政府が2016年3月までの3年間で、リスケ企業の収益の回復性を見定めようとして設けたものである。
リスケ企業の中には、リスケを続けても赤字が垂れ流され単なる延命にしかなっていない場合もあることから、3年間で事業の回復の可能性がない場合は、廃業も選択肢として検討しなければならないということである。
事業の回復可能性とは、営業利益の黒字化である。
営業利益を黒字化するということは、本業で利益を出すという意味となる。
営業利益とは大まかにいうと決算書の損益計算書では
となる。
暫定リスケでは、2016年3月までの3年間で営業利益の黒字化の見込みが必須の要件であった。
2.暫定リスケ終了後の銀行の対応
では、暫定リスケが終了した2016年3月以降、営業利益が黒字化していないリスケ企業に対して、リスケの延長を認めてもらえていないかというとそうでもない。
現状では、今まで通りリスケの継続を行っている銀行がほとんどである。
暫定リスケ期間は終了しているが、銀行はリスケの継続をして頂いているケースが多い。
ただし、今後政府からの方針が変われば、一気に銀行の方針が変わることもある。
そのため、リスケ慣れしてはいけないし、営業利益の黒字化のための行動はしていかなければいけない。
バブル後の銀行の不良債権問題のように、銀行が再建の見通しがない不良債権になりそうな中小企業を対象として、融資回収の動きになれば、倒産してしまう会社も増加するだろう。
今後、営業利益の黒字化ができておらず、回復の見込みがないと判断されてしまうと通常返済に戻されるもしくは保証協会に代位弁済という可能性もある。
そのため、暫定リスケ期間が終了した現段階でも営業利益の黒字化ができていない中小企業の経営者は危機意識を持たなければならない。
いつ、銀行が融資の回収に動くかわからないためである。
そして、現在、経営者の高齢化が問題となっているため、働けるうちに借金を返済しておかないと後々、問題になるケースがある。
例えば、後継者がおらず連帯保証人である経営者の方が自己破産をせざる得ない状況に追い込まれたり、経営者の方に万が一の事があった場合にご家族が銀行から債務の相続を促されたりされるケースがある。
奥様やご子息の方が、会社の事情を何も知らなかった場合は、借金を相続してしまい悲惨な状況になる事もある。
3.暫定リスケ終了後もリスケを継続するには
現段階では暫定リスケ終了後もリスケを継続してもらっているケースが多いが、今後の政府の方針によっては銀行も180度対応を変え返済を求めてくることも十分ある。
そのため、最低でも営業利益を黒字化しておくことが必要である。
それに営業利益が赤字の場合は、そもそも本業で赤字ということなので副業的な収入がない限り、事業を継続していくことは基本的に難しくなる。
赤字であれば、会社の資金はどんどん減っていくからである。
基本的に、リスケ中は追加融資をうける事が出来ないため、会社の資金が尽きた時点で倒産となってしまう。
4.営業利益を黒字化する方法
では、どうすれば本業での儲けである営業利益を黒字化できるのかをご説明していく。
営業利益を黒字化させるには
ことが必要である。
これらを同時に取り組んでいくと早期に営業利益を黒字化することができる。
それでは、一つずつご説明していく。
4-1.経費を下げる
まず、一番初めに取り組むこととして経費の削減である。
既に経費の削減に取り組んでいるかもしれないが、今一度確認してほしい。
経費削減に際し、削減対象となるのは経費の中でも固定費を削減することが重要である。
経費には変動費と固定費がある。
変動費とは売上と連動して、費用が変化するものである。
例えば、仕入れ、材料費、運搬費、外注費などがある。
固定費とは売上の増減にかかわらず、一定の経費がかかることである。
例えば、役員報酬、給与、家賃などである。
変動費は売上と連動して経費も上下するため、削減するべきは固定費である。
まずは経営責任を取る意味でも役員報酬をギリギリまで下げる。
次に家賃など交渉して削減できる可能性がある項目についてはしっかりと取り組んでいく。
一つ注意してほしい点は社員の給与である。
当然、社員の給与は売上に応じて変動しない固定費となり、削減できれば営業利益の黒字ができる可能性が高くなるが、給与を削減することにより社員全体の士気の低下に繋がり、結果売上も下がってしまうこともある。
そのため、社員の給与である人件費を下げる際には慎重に対応してほしい。
経費を削減する際は固定費を削減することができれば、営業利益の黒字化がしやすくなる。
4-2.利益率を高める
売上の大幅な増加が見込めない場合、利益率を高めていくと営業利益は黒字化しやすくなる。
それは売上が変わらなくても利益率が上がって経費が同じならば、営業利益は増えるからである。
例えば売上が1000万円で原価が30%の商品の場合、利益は700万円となる
売上はそのままで原価を1%下げることができた場合、利益は710万円となり、
利益は10万円増加する。
これが売上1億円であれば利益は100万円も変わってくる。
原価を下げるには、複数の仕入先を確保することや仕入先との交渉により、原価率を下げられる場合がある。
また、商品やサービスが複数ある場合は、商品やサービスごとの利益率を出して、利益率が高い商品やサービスを重点的に販売していくと、売上が大幅に増加できなくても利益を増やすことができ、営業利益を黒字化できる可能性が高くなる。
4-3.売上を増加させる
営業利益を黒字化する上で、最も重要なのが売上を増加させることである。
それは、経費を削減するにも限界があるためである。
売上を増加させることが、営業利益を黒字化するためには必要である。
売上を増加させる施策を検討する前に、売上の構成要素を確認していく。
基本的な売上の構成要素は
からなる。
売上を増加させるには客数を増やすか、客単価を増やすことが必要である。
では、客数の増加策としては
- 新規顧客の獲得
- 既存顧客の来店頻度の増加
- 既存顧客の流出防止
となる。
客単価の増加策としては
- 買い上げ点数の増加
- 商品単価の向上
となる。
これら5つの方策のうち、一つ又は複数を増加させる施策を早期に取り組んでいくと、営業利益は黒字になる可能性は高くなる。
まとめ
暫定リスケとは抜本的な経営改善が難しいリスケ企業に対して、2016年3月まで猶予期間を与えたものである。
暫定リスケ終了後も現状は今まで通り、銀行はリスケに応じてくれているが、政府の方針によって銀行の対応が180度変わることもあり、回復の見込みがないと判断された場合は、倒産、自己破産も選択肢にいれていかなければならなくなる。
回復の見込みがあると判断してもらうには最低限、本業の儲けである営業利益を黒字化する必要がある。
営業利益を黒字化する方法は
- 経費を下げる
- 利益率を高める
- 売上を増加させる
となる。
暫定リスケ終了後でもリスケをしていくためには、営業利益を黒字化していくことが急務となるであろう。
田烏武
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