銀行融資をリスケするために必要な4つの条件
売上が減少してきているため、資金繰りが苦しくなっている。
コロナ融資も申し込みをしたが、断られてしまった。
このままでは資金繰りがショートしてしまう。
銀行の返済が減らせるリスケという方法があるのを聞いたが、リスケについてわからないという経営者の方は多いと思う。
そこで、本日は銀行融資をリスケをする方法を元銀行員が解説していく。
弊社が、実際にクライアント様にお伝えしている内容をご説明していく。
銀行融資のリスケとは
まず、銀行融資のリスケ(リスケジュール)とは、銀行の毎月の返済を減らす方法となる。
例えば、毎月の返済額が100万円ある場合、ゼロ円や半分の50万円などに減らす事ができる。
毎月の返済額を減らす事ができれば、資金繰りを改善することができる。
リスケをした場合のデメリットとしては、追加融資が基本的にうけられない事である。
ただし、すでに追加融資を断られているのであれば、リスケをして返済を減らさないと資金ショートしてしまうため、リスケをすぐにでも検討した方がいい。
リスケについては、こちらの記事で詳細に解説しているため、こちらの記事「元銀行員が教える!すぐに資金繰りを改善できるリスケジュールという方法」をご参照いただきたい。
私も銀行員時代は、リーマンショック、東日本大震災の際に数多くのリスケを行った。
銀行員としては、リスケを行っても何の実績にもならないため、嫌がる銀行員もいる。
では、どのような点に注意する必要があるのかポイントを上げていく。
1.経営が改善する見込みがあること
まず、リスケをするための条件としては、今後、御社の経営が改善できる見込みがあることが必要である。
銀行は本来リスケをする義務はないので、今後経営が改善する見込みがないと判断されれば、リスケに応じないこともできる。
経営が改善する見込みがあるかどうかを判断するのに必要になるのが、経営改善計画書と資金繰り表である。
経営改善計画書とは文字通り、経営を改善するための計画書である。
経営改善計画書には経費の削減、リストラ、売上の増加策、不動産の売却などを盛り込んでいく。
経営改善計画書の最終的なゴールは、リスケを通常返済に戻すことである。
経営改善計画書の内容により、リスケに応じてもらえるかが決まってくる。
経営改善計画書の作り方についてはこちらの記事「リスケをするために必要な経営改善計画書作成の8つのポイント」で詳細に説明しているので参考にしてほしい。
経営改善計画書とセットに必要となるのが資金繰り表である。
資金繰り表とは、会社の現金の流れを現した表である。
資金繰り表は、最低でも今後6カ月程度のものを作成する必要がある。
銀行はリスケに応じたとしても、直近の資金が回らなければリスケに応じても仕方がないので、資金繰り表の提出を求められることが多い。
リスケに応じてもらった場合は資金繰りがまわることが前提になるので、資金繰り表は必要となる。
資金繰り表の作り方についてはこちらの記事「【エクセルのフォーマット付き】初心者でも1日で資金繰り表の作り方がわかる6つの手順」で詳細に説明しているので参考にしていただきたい。
2.役員報酬を下げる
リスケをするための条件としては、役員報酬を下げることである。
上場企業では、経営責任をとって社長を辞任するということがよくあるが、中小企業の場合は、会社の株主と経営者が一緒のことがほとんどである。
そして、中小企業の経営者のほとんどは会社の借入の連帯保証人になっている。
連帯保証人になっているため、経営責任をとって社長を辞めても意味がないし、株主は自分自身なので辞めさせることもしないだろう。
銀行からしたらリスケに応じる代わりに、役員報酬を下げてリスケに至った経営の責任をとってくださいという意味もある。
では、役員報酬はいくらくらい下げればいいかと質問をうけることが多いが
役員報酬は生活ができるギリギリに設定することが実務では多い。
リスケをするための条件は、経営者が経営責任を取る意味で役員報酬を生活ができるギリギリまで下げることが必要である。
3.他行一律同条件を守る
リスケをするための条件として「他行一律同条件」というものがある。
他行一律同条件とは、リスケをするならば借入のあるすべての銀行、信金、日本政策金融公庫を同時にリスケしなければいけないという条件がある。
他行一律同条件を守らない場合は、すべての金融機関のリスケの同意を得ることができないため、リスケをすることができなくなる。
例えば、A銀行はリスケをして、B銀行を通常返済のまましようとすると当然A銀行からはリスケに応じてもらえない。
A銀行がリスケに応じないならば、C信金も日本政策金融公庫もリスケに応じないということになる。
私も銀行員時代に、お客様があと数か月で完済するからという理由で、1つの銀行だけリスケをされなかった事があった。
その時は、当然、自分の銀行が「他行一律同条件」のルールを無視されるものであり、返済猶予に応じることはできなかった。
ちなみに後で、バレた場合は、リスケをしていただいた銀行から通常返済に戻されてしまうと思っておいていいだろう。
そのため、リスケをするためには、借入があるすべての金融機関を同時にリスケすることが条件となる。
4.誠実な姿勢
リスケをするための条件として、最も大事なのは経営者の「誠実な姿勢」である。
誠実な姿勢とは、銀行に対してお詫びの心を持ち対応することである。
リスケはもともと契約通りに返済ができなくなったために、返済の猶予をお願いする行為である。
そのため、リスケに申し込みにきた経営者がリスケしてもらって当然というような横柄な態度をする場合は、リスケに応じてもらえないこともある。
それは、銀行員も人間であり感情があるからだ。
私が銀行員だった頃に、リスケに申し込みにきた経営者がベンツで銀行まで出向いてきた。
その時の上司が、「返済ができないのに何でベンツに乗ってくるんだ」と怒っていた。
リスケを申し込む前に、ベンツを売って返済するべきという見解からである。
考えてもみてほしい。
あなたがお金を貸している友人がいて、返済を待ってほしいというお願いに来たとして、もしその友人が高級車で頼みにきたらどのように思うのか。
もしくは全然返済しないのに、「海外旅行に行っている」とか、「高級な外食ばかりしている」と耳にしたらどう思うのか。
多くの方は、気分が悪いと思う。
それと同じ理由である。
リスケに依頼にいく場合は、銀行がどのように考えるかを考え、誠実な姿勢で対応しなければ、結果、リスケをすることができなくなり、資金ショートをしてしまう。
まとめ
銀行融資をリスケした場合は、毎月の返済額を減らすことができるため、資金繰りは改善される。
デメリットは、基本的に追加融資がうけられないという事である。
融資が受けられないのであれば、追加融資を断られたタイミングでリスケをする事が、効果的である。
リスケをするための条件としては、
- 経営が改善する見込みがあること
- 役員報酬を下げる
- 他行一律同条件を守る
- 誠実な姿勢で対応すること
が必要となる。
リスケをするために経営改善計画書と資金繰り表を作成し、経営が改善する見込みがあることを認めてもらい、銀行に対して誠実な姿勢で対応すればリスケを認めてもらえる可能性は高くなる。
田烏武
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