IT企業の資金繰りを改善する6つの方法
IT企業は案件がある時は売上があがるが、案件がない場合は売上がほとんどあがらないことが多い。
ただし、エンジニアの給料は毎月発生するため、案件がない場合は資金繰りがどんどん悪化していく。
そこで本日はIT企業の資金繰りを改善する方法をご紹介していく。
弊社がクライアント様に実際にお伝えしている内容をご説明していく。
1.IT企業の資金繰り
IT企業の資金繰りで特徴的なのが毎月の売上の変動が大きいことがあげられる。
請負契約でシステム開発案件をこなす場合、案件がある月は売上はあがるが、案件がない場合は売上がまったくあがらない月もある。
システム開発案件は大きな案件は1年を超えるものもあるが、概ね3ヶ月から6ヵ月程度の案件が多い。
そのため、年間を通して受注を獲得していかなければならない。
受注がない月が続くとエンジニアの給料や家賃などの経費で資金繰りが徐々に悪化してくる。
IT企業はピラミッド型の業界であり、下位の下請けになればなるほど利益率は下がっていく。
受注をとりあって価格競争に巻き込まれるケースもあるため、赤字になる案件もある。
外注を利用している場合は外注先にも支払っていかなければならないため赤字のシステム案件をうけてしまうと外注先に支払いができない場合も出てくる。
銀行から融資をうけられるうちは資金繰りをまわすことができるが、融資がうけられなくなると、代表者個人のお金を会社に入れて資金繰りをまわしていかなければならない。
代表者個人の資産を取り崩したり、親族に借りたりする必要がでてくる。
ただし、代表者個人でもいくらでも借りられる訳はなく、借りられなくなると資金繰りは破綻する。
そのために、IT企業はいかに年間を通して黒字案件を確保していくかが重要となる。
2.資金繰りを改善する方法
資金繰りをまわしていくには収入を増やす、支出を減らす、借りるのどれかをする必要がある。
ただし、借りる方法は根本的な解決策にはならず、借りられなくなったら時点で資金繰りはショートする。
ただし、システム開発の案件がある場合のエンジニアや外注先への立て替え資金で、短期で借りる場合はいい。
IT企業の短期の借入をする方法についてはこちらの記事「IT企業が融資をうけるための2つのポイント」を参考にしてほしい。
開発案件がない場合で、すぐに資金繰り改善に効果があるのは支出を減らすことである。
そこで、ここからは支出を減らす方法についてご説明していく。
現状システム開発の案件が全くなく、銀行から融資を断られた際に特に有効な方法である。
2-1.リスケを行う
まず、銀行から融資を断られるということは長期の借入が売上にたいしてかなり多くなっていることが多い。
長期の借入が多い場合は、たいてい毎月の返済額も多くなっている。
そこで活用すべくは毎月の返済額を減らすリスケという方法である。
リスケを活用することで毎月の元金部分の返済額をゼロにしたり、減額することができる。
ただし、リスケをするとリスケ期間中は追加の融資がうけにくくなるというデメリットもある。
リスケについてはこちらの記事「元銀行員が教える!1ヶ月で資金繰りを改善できるリスケという方法」で詳細に説明しているため熟読してほしい。
2-2.エンジニアの給与を削減する
IT企業の場合、エンジニアの人件費比率は50%を超えることが多いため、エンジニアの給与の削減をすることで支出を減らす。
これは固定費を減らすことができるため、資金繰りはかなり改善される。
ただし、給与を削減することで退職を検討するエンジニアも出てくる可能性が高いため、自社のエンジニアの人数が減るとシステム開発の案件ができなくなる場合は慎重に検討する必要がある。
2-3.税金・社会保険料を分割で支払う
毎月支払っている税金や社会保険料は分割で納付することができるため、分割での納付で支払い支出を減らす。
分割で納付すうためには税金は税務署、社会保険料は年金事務所にいって交渉をする必要がある。
税務署や年金事務所にいく際には資金繰り表を持参して交渉すると分割納付に応じてもらいやすくなる。
資金繰り表の作り方についてはこちらの記事「【エクセルのフォーマット付き】初心者でも1日で資金繰り表の作り方がわかる6つの手順」を参考にしてほしい。
ただし、税金や社会保険料を分割支払いにすると滞納扱いになり、14%程度の延滞料が発生するため注意してほしい。
また、税務署や年金事務所はすぐに会社の財産を差し押さえできる権利を持っているため、督促を無視し続けたりすると銀行の預金はもちろんのこと売掛金(取引先に差し押さえ通知がいく)も差し押さえられるケースもあるため払えない場合は必ず交渉にいってほしい。
税金・社会保険料は延滞料が14%程度と高いため、分割で納付しても税金が払えない場合はエンジニアの人件費をさらに減らした方がいい場合もある。
2-4.外注先への支払いを分割で支払う
外注先への支払いを分割で支払うことにより支出を減らす。
システム開発の場合、元請け先からピラミッド状で下請け会社が連なっている業界のため、人手が足りないときは外注を利用することが多い。
外注先への支払いを分割で支払う場合は、事業計画書と資金繰り表を持参して交渉すると分割での支払いに応じてもらいやすくなる。
ただし、下請け先も資金繰りが悪い場合は分割での支払いは断られるため、注意が必要である。
また、下請け先の支払いを分割払いにした場合、次の開発案件の依頼がきても下請け先は支払いが完了するまで仕事をうけてもらえないことが多いため、下請け先がシステム開発をする上で必須の場合は分割での支払いは行わない方がいい。
3.収益を安定させる方法
上記の内容で支出を減らし資金ショートを回避できたところで、次は収益を安定させる施策に取り組む必要がある。
収益を安定させることが資金繰りを改善する本質的な改善策なのでしっかりと取り組んでほしい。
ここからは資金繰りを安定させるための収益を増やす方法をご説明していく。
3-1.請負開発がない時期はエンジニアに出稼ぎにいってもらう
請負の受託開発のみの仕事をしている場合は、継続的に案件がないと収入が安定しないため資金繰りが安定しない。
継続的に案件がない場合は、エンジニアの給料を稼ぐために他社のシステム開発案件の手伝いにいってもらう。
エンジニアに出稼ぎにいってもらうことで、エンジニアの稼働率をあげて請負の案件がない時期でも埋め合わせをすることができる。
ただし、請負の案件と出稼ぎにいってもらう期間をうまく調整しないと、請負の案件の依頼がきた場合に開発人数が足りなくなる場合もある。
また、出稼ぎにいけるソフトウェア開発の会社を探しておく必要があるため、経営者の人脈から開拓することが有効である。
3-2.ストックビジネスにシフトする
資金繰りを安定させるには毎月継続的に売上をあげることが重要である。
IT企業の場合は、案件がある時は売上が一気にあがるため、ビジネスモデルとしてはフロー型のビジネスモデルである。
ストックビジネスは毎月売上が安定的にあがるビジネスモデルであり、積み上げることにより、毎月の売上が増加していく。
IT企業でストックビジネスに移行していくためには、自社サービスを開発してシステム利用料として毎月収益をあげるモデルが最も適している。
自社サービスは収益が安定する上に利益率も高いため、資金繰りの安定には大きく貢献する。
ただし、自社サービスを開発して収益があげるまでに成長するにはかなり時間がかかる。
また、自社サービスを開発しても売れないことも多いため、どのような自社サービスを開発すれば売れるかが重要となる。
まとめ
IT企業は資金繰りが不安定になりやすいため、請負の案件がなく銀行から融資を断られた場合は支出を削減する必要がある。
支出を削減する方法としては
- リスケを行う
- エンジニアの給与を削減する
- 税金、社会保険料を分割で支払う
- 外注先への支払いを分割で支払う
である。
ただ、支出を削減しても収益を安定させなければ本質な資金繰りの改善にはならない。
収益を安定させる方法としては
- エンジニアに出稼ぎにいってもらう
- ストックビジネスにシフトする
である。
本記事の内容を実践し、支出を削減して資金ショートを防ぎ、収入を安定させ盤石な財務体質を確立していただきたい。
田烏武
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