リスケ交渉を成功させるために知っておくべき5つの事

Pocket

リスケ 交渉

コロナウイルスの影響で、売上が激減し資金繰りが悪化している。

このまま、いけば資金繰りはショートしてしまう。

銀行の返済を減らすリスケという方法があることはわかったが、どのように金融機関と交渉していいのかわからない経営者も多いだろう。

もし、リスケの交渉が成功しなかったら倒産してしまう可能性もある。

そこで本日は、元銀行員がリスケを成功させるポイントについてご説明していく。

弊社が、クライアント様に実際にお伝えしている内容をお伝えしていく。

 1.リスケを成功させるための交渉術

では、ここからは具体的に、どのように金融機関とリスケの交渉をすればいいのかご説明していく。

1-1.返済が苦しくなった原因を説明する

まず、リスケを依頼する際は、なぜ経営が悪化したかを説明しなければならない。

それは、本来の返済契約を変更してもらうため、資金繰りが悪化した原因を説明することが必要だからである。

コロナウイルスの影響であれば、コロナウイルスの影響で、どの程度業績に影響が出ているかは決算書や試算表などで説明する必要がある。

直近の試算表と一緒に説明すると、銀行員にも現在の業績が悪化していることがわかるため、直近の試算表は必ず持参するようにする。

資金繰りが悪化する要因で最も多いのが、売上の減少である。

例えば、コロナウイルスの影響で売上のほとんどの取引をしている大口取引先が倒産などをして、取引がなくなってしまったケースの場合は試算表に売上が記載されているので、「売上が去年と比較して〇〇円減少して利益も〇〇円減少した」と数字で具体的に説明するとわかりやすい。

1-2.現状のまま返済を続けたらどのようになるのかを説明する

返済が苦しくなった原因を説明したら、次は現状のまま返済を続けていくとどのようになるのかを説明する。

売上が急激に減少した場合、現状のまま返済を続けたら6ヵ月以内に資金ショートを起こすことがある。

そのため、「現状のまま返済を続けた場合、〇ヵ月後には資金ショートを起こしてしまう」資金繰り表を使って説明するとわかりやすい。

資金繰り表の作り方についてはこちらの記事「【エクセルのフォーマット付き】初心者でも1日で資金繰り表の作り方がわかる6つの手順」で詳細にご説明しているので熟読してほしい。

このまま返済を通常通り続けると、資金ショートを起こしてしまうということを、資金繰り表を使って説明する事で現状がわかっていただける。

1-3.いくら返済を減らす必要があるのかを説明する

返済を通常通り続けると資金ショートを起こしてしまうということを説明したら、ではいくら返済を減らせば資金ショートを起こさずにすむのかを説明する。

ここでも、返済を減らした後の資金繰り表を、作成するとわかりやすいので、リスケ前とリスケ後の資金繰り表を作成するといいだろう。

リスケ後の資金繰り表を作成すると、いくら返済を減らせばいいのかが見えてくる。

ここで気をつけていただきたいのが、中途半端の返済額を言わないことである。

例えば毎月の返済が100万円ある場合、銀行から「50万円ならリスケに応じます」と言われたとしても、50万円減らしただけでは資金繰りがあまり改善しないのなら、最初は0円で交渉するべきである。

中途半端な返済額でリスケをしてしまうと、経営改善ができないことがあるため、返済額の交渉は慎重に行ってほしい。

1-4.いつまで返済を減らすかを説明する

返済額の交渉ができたら、いつまで返済を減らすかを説明する。

リスケをする際は、6ヵ月ごとに見直しされることが多いので、まずは6ヵ月で交渉をする。

もし6ヵ月後に業績が改善できていない場合は引き続きリスケの交渉ができるため、初めから1年や2年のリスケを依頼しないように注意していただきたい。

リスケの期間に関しては、こちらで「リスケの期間を設定する際に知っておくべき6つの事」詳細にご説明しているので参考にしていただきたい。

1-5.どのように経営改善をしていくかを説明する

リスケの交渉の際、どのように経営改善するかの交渉が一番難しい所である。

どのようなことを行い、経営改善をしていくのかを示すために、経営改善計画書を作成する必要がある。

経営改善計画書の中に、必ず入れ込むのが経費の削減売上向上策である。

経費削減の場合、役員報酬や人件費などの固定費を削減する施策が多い。

売上の向上の方法は業界や会社の特徴により、戦略は変わってくるが、そもそもリスケをする原因が売上の減少ならば、売上を増加させる施策も盛り込まなければリスケは解消できない。

そのため、リスケを解消するには、売上を回復させる施策が必須になる。

経営改善計画書を使って、経営を改善する施策を説明する必要がある。

リスケについてはこちらの記事「元銀行員が教える!1ヶ月で資金繰りを改善できるリスケという方法」でも詳細にご説明しているので参考にしていほしい。

2.リスケが失敗する原因

ではここからはリスケの交渉が失敗する原因についてご説明していく。

2-1.誠実に対応しない

まず、そもそも金融機関はリスケをすることは義務ではないということである。

私も銀行員時代に経験があるのだが、あたかもリスケをしてもらって当たり前と思って、まったく悪びれる様子もなく上から仰られる中小企業の経営者の方がみえた。

中小企業側は本来、返済するはずの金額を、変更してもらう立場であるため、誠実に対応しないとリスケを認めてくれないケースがある。

もちろん、銀行員も人である。

コロナウイルスの影響によって、甚大な影響が及んでいるのはわかっている。

ただ、リスケを依頼する際に経営者の方が、リスケして当たり前みたいな感じで話されると銀行員も腹が立つことがある。

誠実な態度で交渉しない場合、金融機関はリスケを認めないこともある。

リスケを行っても銀行員にメリットはないですし、申請書を書くにも手間や時間がかかる。

そのため、誠実な態度でない経営者の場合には、リスケをして経営改善のお手伝いをしたいと思われない事もある。

リスケを交渉する際は、卑屈になる必要はないが誠実な態度で交渉する事が重要である。

2-2.借入があるすべての金融機関を同時にリスケしない

リスケをする前提条件として、借入のある金融機関を同時にリスケをしないといけないルールがある。

これは、金融機関の専門用語で「他行一律同条件」と呼ばれる

他行一律同条件を、無視してリスケをしようとすると必ず失敗する。

例えば、A銀行でもうすぐ返済が終わる借入があるから、A銀行のものは返済を続けて、B銀行ではリスケをするといったことは、B銀行は絶対に認めない。

それは、B銀行の立場からすると「何でうちの銀行だけリスケをしなければいけないのか」と思う。

そのため、リスケをする場合はすべての金融機関を同時に同じ条件で行うことが必用である。

2-3.必要書類を作成しない

リスケが失敗するケースとして、リスケに必要な資金繰り表経営改善計画書などを全く作成しない場合がある。

これは2-1誠実に対応しないに似ているが、リスケを依頼する立場なのに、資金繰り表や経営改善計画書などを作成しないと、経営を改善する気がないと金融機関に判断されてしまうことがある。

そのため、書類の作成はしっかりと行う必要がある。

経営改善計画書の作成方法についてはこちらの記事「リスケをするために必要な経営改善計画書の8つのポイント」で詳細にご説明しているため参考にしてほしい。

2-4.粉飾決算を行っている

リスケが失敗するケースとして、粉飾決算を行っている場合がある。

粉飾決算とは決算書を良くみせかけようとして、嘘の決算書を作成することである。

これは金融機関を裏切る行為であり、下手をすれば詐欺として訴訟になる可能性もあるため絶対にやってはいけない。

粉飾決算を行っているということは、今まで金融機関を騙し続けてきたことになるため、信頼関係が崩壊しリスケを認めない金融機関もある。

ただし、金融機関によっては今後の対応次第では、リスケを認めてくれる場合もあるため、粉飾決算を行ったことについては深く反省し誠実に対応することを心がけるべきである。

顧問税理士の先生は、作成した決算書に対して銀行から追及される事を恐れ、一緒に同行したくない心理が働くため、できれば顧問税理士以外の先生にお願いした方がスムーズにいく事もある。

ここまでが、リスケが失敗するケースで多いものである。

リスケが失敗するケースで多いのは、金融機関に対して誠実な対応をしていないことが多いため、まずは誠実に対応することを心がけるべきである。

3.有利な条件でリスケを成功させる交渉術

ここからは、より有利な条件でリスケができるための交渉術についてご説明していく。

3-1.金利を引き上げられそうになった場合

リスケをする場合、金利の引き上げを言われる場合がある。

概ね0.1%~0.2%程度の引き上げを迫られる場合が多い。

金利が引き上げられると借入金額が多い場合、支払利息は大幅に増加してしまうため、粘り強く交渉する必要がある。

まず、金利を引き上げられる理由からご説明すると、リスケをすることにより銀行から倒産する確率が高いと思われる。

そのため、金融機関は倒産した時のために、貸し倒れ引当金を積まなければならない。

貸し倒れ引当金を積むと金融機関の利益が減ってしまうため、その代わりとして金利を引き上げるのである。

ただし、現在は経営改善計画書を作成していれば、新たに貸し倒れ引当金は積まなくてもいいため、金利を引き上げられる必要はない。

そのため、金利を引き上げられそうになった場合は、金利の引き上げる理由が引当金を増加することが理由なのか確認してみよう。

3-2.追加担保を求められた場合

金融機関からリスケをする代わりに追加担保を求められる場合がある。

その場合は、担保に入れるものがないと交渉しよう。

そもそも担保があれば、担保を入れて追加借入ができることが多い。

また、2-2.借入があるすべての金融機関を同時に同じ条件でリスケしないでご説明させていただいた通り、リスケをする場合はすべての金融機関を同じ条件でリスケしなければいけない。

そのため、片方の銀行に追加担保を入れて、もう片方は担保を入れないことはルール違反になるため、担保が入れられかった銀行からはリスケは認められなくなる。

そのため、リスケの交渉時に追加担保を求められても追加担保をいれてはいけない。

まとめ

リスケを成功させるためには、しっかりと手順を踏まえた上で誠実な態度で交渉していくことが必要である。

リスケを成功させるために、重要なポイントをもう一度確認しておく。

  • 返済が苦しくなった原因を説明する
  • 現状のまま返済を続けたらどのようになるのかを説明する
  • いくら返済を減らす必要があるのかを説明する
  • いつまで返済を減らすかを説明する
  • どのように経営改善していくかを説明する

である。

リスケを成功させ、資金繰りを改善し、コロナウイルスに負けずに何とか経営を立て直していただきたい。

リスケの交渉をする際は、本記事の内容を実践していただけるとリスケが成功する確率は格段にあがる。

この記事がお役に立ちましたらフォローをお願いします

Pocket

The following two tabs change content below.

田烏武

代表取締役株式会社 田烏経営研究所
大学卒業後、地元の地方銀行に入行し中小企業、個人事業主向けの融資業務を担当する。 業績悪化先に対する返済条件のリスケジュールを毎月のように行う。 数多くの業績悪化先の特徴を見る中で、資金繰りが悪化する原因についてわかるようになる。 世の中の中小零細企業の資金繰り改善を目指すため独立。 得意分野は業績悪化先に対するリスケの実行支援。