創業融資を1ヵ月でうけるために知っておいてほしい4つの事
会社を創業して軌道にのせるためには資金が必要になることが多い。
自己資金もあるが、それだけでは足りない場合、金融機関から融資をうけることが必要だろう。
ただ、創業してすぐに融資をうけたいがどうすれば融資がうけられるのか、どこに相談にいけばいいのかわからない起業家がほとんどである。
そこで本日は、起業家が創業融資をうけるための方法をお伝えしていく。
弊社が実際にクライアント様にお伝えしている内容をご紹介していく。
1.創業融資とは
まず、創業融資とは会社を設立する起業家又は設立して決算申告を2期終えていない起業家が多く利用する融資である。
多くの起業家は日本政策金融公庫か銀行か信金で創業融資をうけることが多い。
創業融資をうけるメリットとしては、創業する際に自己資金だけでは資金が足りない場合に利用される。
例えば、IT企業であればシステム開発のための人件費などの運転資金に利用したり、飲食店開業などであれば店舗の設備資金などに利用されたりする。
業種によって資金の必要理由は様々であるが、自己資金で足りない分を創業融資で補うことができる。
では、創業融資はどの程度借りられるのかなどを次にご説明していく。
1-1.借入金額
創業融資の場合、最大の借入金額は3,000万円以内がほとんどである。
最大3,000万円まで借りられる制度だとしても、設備投資を含めて最大3,000万円の場合がほとんどのため、運転資金だけの場合は借りられる金額はもっと少なくなる。
創業融資の運転資金だけの場合、自己資金や創業計画書の内容にもよるが1,000万円以内の借入金額が多い。
事業を軌道に乗せるには平均して半年程度かかることが多いため、運転資金は売上が全くあがらなくても資金繰りがまわせるように1ヶ月にかかる経費の半年分の運転資金を用意することが理想である。
1-2.返済期間
返済期間は設備資金で20年以内、運転資金で7年以内が多い。
設備資金の場合は設備の耐用年数によって決まることが多い。
耐用年数とは建物や設備が何年使用できるかの目安となるものである。
例えば、店舗の建物の耐用年数が15年なら15年以内の返済期間に設定しなければならない。
返済期間を短くしすぎると毎月の返済が増えてしまうため、資金繰りが苦しくなる。
創業直後は売上が軌道にのるまでの期間が読みにくいため、可能な限り長期の返済期間をとる方が毎月の返済額は少なくてすむ。
1-3.金利
創業融資の金利は2%前後が多い。
借入期間によって金融機関側は貸倒れリスクが変わってくるため、金利は前後する。
日本政策金融公庫で無担保・無保証人で融資をうける場合は2.6%前後と金利は高くなるが、万が一軌道にのらず倒産しても無担保・無保証人なので自己破産しなくてもすむため次に再挑戦ができる可能性がある。
銀行で融資をうける場合は保証協会経由で融資をうけることが多いため、金利自体は1.5%前後だが別途保証料が1%程度かかる。
金利は銀行よりも日本政策金融公庫の方、条件がいいことが多い。
1-4.担保
20代30代で起業する場合、自宅を購入していない限りは担保にいれられる資産はほとんどないことが多い。
そのため、創業融資の場合、個人資産を担保にいれることは少ない。
自宅を購入している場合は担保にいれることによって融資がうけやすくなる。
ただ、自宅の住宅ローンがかなり残っている場合は担保価値が出にくいため創業融資にはあまり影響しない。
自宅を担保に入れる場合、万が一会社が倒産した場合は自宅もとられてしまうため自宅を担保にいれることはあまりおすすめしない。
1-5.保証人
保証人は原則、代表者が連帯保証人となる。
ただし、日本政策金融公庫では無保証人で融資がうけられる制度があるため、チャレンジしてみてもいいだろう。
銀行の場合は無保証人で創業融資をすることは貸倒れのリスクが高まってしまうため、あまりない。
無保証人で創業融資をうけたい場合は日本政策金融公庫で申し込みをする方がいいだろう。
2.創業融資をうけるためのポイント
創業融資をうけるにはいくつかポイントがある。
そのポイントについてご説明していく。
2-1.自己資金の準備
創業融資をうけるには基本的に自己資金が必要である。
稀に自己資金なしで創業融資がうけられる方もみえるが借入金額が小さい場合などであり、ほとんどの場合自己資金がないと創業融資をうけられる可能性は低くなる。
創業融資で自己資金が必要な理由としては、起業家の方が創業にあたってお金の面できちんと準備をしてきたかということを金融機関はみるからである。
お金の準備をきちんとしてきた起業家と、お金の準備をしていない起業家では本気度が違うとみられることがある。
もう一つ自己資金が大事な理由としては自己資金が多ければ多いほど借入金額は少なくてすむということである。
借入金額が少なくてすむということは、起業家の方は失敗した時のリスクが低くなり、金融機関側も貸し倒れリスクは低くなる。
一般的に創業して1年で約半分の会社がなくなると言われている中で借入金額が少ない方がリスクは少ないのは明らかであり、自己資金は創業をする前からコツコツと貯金しておくことが必要である。
日本政策金融公庫や銀行は個人の通帳の履歴をみて自己資金をどのように貯めたかをチェックするため、一時的に誰かから借りて自己資金にみせるいわゆる見せ金は通用しないため、創業を意識したときからきちんと自己資金を準備することが創業融資をうける上では重要となる。
では、自己資金はいくら貯めておけばいいかというと一般的に300万円程度が多い。
もちろん創業する業種によるが飲食業や製造業などの設備資金がいる業種については内装や機械などでお金がかかるため、自己資金はもっと多い方がいい。
設備などでお金があまりかからない、ソフトウェア開発業などは人件費分の運転資金だけですむため、300万円あれば一人で開業するなら借りなくても足りる場合が多い。
自己資金の金額は創業する業種によって変わってくるため、創業する前から開業するのにいくら必要かを調査しておく方がいいだろう。
創業融資では自己資金が多ければ多いほど融資をうけられる可能性は高くなる。
2-2.税金の滞納がないこと
税金の滞納があると創業融資をうけることはできない。
サラリーマンから起業する際は住民税や社会保険料は会社で払ってくれているため、それ以外の税金は自宅などの固定資産税や自動車などの自動車税が延滞していると創業融資をうけることができない。
日本政策金融公庫は実質国が運営しているため、納税をしていない場合は創業融資をうけることができない。
銀行などの民間の金融機関は税金の滞納がある状態で融資をすると税務署などから差し押さえをされた場合、税金の納付に優先権があるため、融資が焦げ付くことが多い。
そのため、税金の滞納がある場合は銀行からも創業融資をうけることができない。
これは創業融資だけでなく創業以降でも税金を滞納している会社については基本的に融資をうけることができないため、今のうちからきちんと税金を納付することが大事である。
万が一、現時点で税金の滞納がある場合は先に全額納付してから創業融資の申込をするといいだろう。
2-3.個人信用情報がブラックでないこと
創業融資をうける際には個人信用情報というものをチェックされることが多い。
個人信用情報とは個人のクレジットカードや消費者ローンなどの情報がのっているものである。
個人の信用情報を取り扱っている機関は日本信用情報機構(JICC)、CIC、全国銀行個人信用情報センターの3つがある。
日本政策金融公庫や銀行は上記の個人信用情報機関に登録しているため、返済がきちんとされているか自己破産はしていないかなどいわゆるブラック情報を見ることができる。
個人信用情報がブラックの場合は創業融資をうけることができない。
融資をしてすぐに延滞や倒産をされるリスクがあるからである。
よくあるのがクレジットカードや消費者ローンの延滞があって審査が通らないことがある。
だいたい3ヶ月連続などで延滞をしていたり、そもそも返済をしていなかったりするとブラックになっている場合が多い。
最近、多い事例は携帯電話の機種代金の分割払いは個人信用情報の対象のため携帯電話の料金の支払いが遅れていると、創業融資をうけられなく場合がある。
この信用情報機関の情報は、最低でも5年間は残るため、クレジットカードや消費者ローンなどがある場合は当たり前のことであるがきちんと延滞しないようにしなければいけない。
創業融資の場合個人での借金が他にないか聞かれるため、嘘をついて誤魔化そうとしても個人信用情報をみれば一発でわかるため、嘘をついていることがわかった瞬間、金融機関からの信用を失い創業融資はうけられなくなる。
2-4.創業計画書の作成
創業融資を申込む際は必ず創業計画書の提出を求められる。
それは、創業時は過去の実績がないため金融機関が、その事業が成功するかどうかを創業計画書で判断するからである。
そのため、創業計画書は特に綿密に作成する必要がある。
創業計画書については今後詳細な記事を公開してくため、ここでは簡潔に説明していく。
創業計画書を作る際の重要なポイントは
- 自分の強みを活かした計画にする
- 客観的なデータを盛り込む
- 根拠のある売上予測を立てる
- 借入が必要な理由を盛り込む
である。
1つ目の自分の強みを活かした計画にするとは経営をする際に自社の強みを活かして経営していくことで事業が成功しやすくなると言われている。
そのため、金融機関も自社の強みを活かした計画書の方が、評価が高いのである。
創業当初であれば人数は自分か数人しかいないため、自社というよりは自分の強みを活かしていくことがいいだろう。
例えば、システムの開発を行うソフトウェア開発業を起業する場合、起業家の方が前職でシステムエンジニアをしており、成功しやすいwebサービスの企画も自分でできる場合それは競合他社と比べて強みとなる。
システムの構築ができる会社はたくさんあるが成功しやすいwebサービスの企画までお手伝いできる会社はあまりないからである。
2つ目の客観的なデータを盛り込むとは創業計画書を作る場合、どうしても起業家の想いが強すぎて計画が主観的なものになりやすい。
主観的なものになった結果、失敗してしまうケースも多い。
それを防ぐには国や大手の会社などが提供している客観的なデータを盛り込むことが重要である。
例えばシステム開発を行うソフトウェア開発業であれば今後人工知能などの発展が見込めその分野で起業するなら、それが証明できる客観的なデータを国や大手の会社などから引用し、盛り込むことで主観的な創業計画書になりにくくなる。
金融機関も過去の事例から主観的な創業計画書は失敗することが多いことはわかっているため、客観的なデータが入った創業計画書の方が融資はうけやすい。
3つ目の根拠のある売上予測を立てることが創業計画書を作成する上で一番難しい部分である。
それは実績がないため、どれくらい売上があがるのかわからないからである。
わからないため、根拠のない売上予測になりやすい。
一番いいのが創業前に受注が確保できており、仕事がある状態で創業できるなら根拠は明確であり売上予測は立てやすい。
顧客ゼロから創業する場合は、思ったほど売上が伸びないことが多いので売上予測は厳しめに見積もる方がいいであろう。
根拠のある売上予測を立てることができれば、金融機関の融資をうけやすくなる。
一つ忘れないでいただきたいのが借りたお金の返済は利益からするということである。
売上予測よりも経費が多くなってしまう赤字の場合は借りたお金の返済ができないということなので今一度計画を練り直す必要がある。
4つ目の借入が必要な理由を盛り込むは金融機関に融資を申込むため、借入金額と借入理由は盛り込んでおかなければいけない。
例えば、IT企業の場合、知り合いのソフトウェア開発の会社から開発期間6ヶ月で金額は1000万円のシステム開発の依頼がきているとする。
入金はシステムが完成してから一括で入金の場合、先にエンジニアの人件費の立て替え費用などの運転資金が必要となってくる。
その場合、売上が入るまでの6ヶ月分の運転資金を用意する必要がある。
6ヵ月分の運転資金が900万円とすると自己資金300万円ある場合、残り600万円の運転資金が足りないことになる。
その足りない分600万円を金融機関で融資の申込みをする。
この事例では、借入が必要な理由は開発案件の入金1000万円があるまで、6ヶ月分の人件費等の運転資金900万円が必要だが、自己資金300万円では600万円運転資金が足りないため、運転資金600万円が融資として必要と説明できると金融機関は納得する。
起業家の方で多いのがいくらくらい借りることができますかと聞かれる方が多いですが、いくらあれば軌道にのるまで資金繰りをまわしていけるのか計算ができなければ創業してもすぐに資金繰りは行き詰ってしまう。
借入が必要な理由を盛り込むには、資金計画を立てる必要がある。
資金計画を立てるには資金繰り表を作ることで必要な借入金額が見えてくるため一度資金繰り表を作成してみるといい。
資金繰り表とは会社のお金の流れを表した表であり、創業後も会社のお金の流れを把握するのに使うことができる。
資金繰り表についてはこちらの記事「エクセルのフォーマット付き】初心者でも1日で資金繰り表の作り方がわかる6つの手順」で詳細に説明しているため参考にしてほしい。
創業計画書を作成する際は上記の4点を意識してもらうと金融機関の評価が高くなり、融資をうけられる確率はあがる。
3.創業融資をうけるための手順
では、ここからは創業融資をうけるための流れをご説明していく。
大まかな流れとしては
- 創業融資を申込む金融機関を選定する
- 創業計画書を持参し、融資の申込みをする
- 面談(日本政策金融公庫の場合)
- 融資実行
という流れとなる。
融資申込みから実行までだいたい1ヶ月から1ヶ月半程度かかることが多い。
そのため、融資申込みは余裕を持って行ってほしい。
創業融資を申込む金融機関は実質国が運営している日本政策金融公庫と民間の金融機関の銀行や信金で申込みをする。
日本政策金融公庫の方が公的な金融機関のため、無担保・無保証で融資をうけられたり、金利の優遇があったり、民間の金融機関よりも条件がいい場合が多い。
そのため、まずは創業融資の場合、日本政策金融公庫の融資を申込み審査が通らなかったら、銀行や信金に申込みをする流れがいいだろう。
創業融資で銀行や信金で申込みをする場合はほとんどの場合で保証協会(47都道府県にある)の審査を通すことになる。
銀行や信金で創業融資を申込みする場合は会社の口座を作る金融機関がいい。
それは、同じ銀行でも三菱東京UFJ、三井住友、みずほなどのメガバンクは大手の取引会社をメインの顧客としているため、創業融資の申込みは地方銀行か信金の地元の中小企業の支援をしているところの方が融資はうけやすいからである。
銀行や信金で創業融資を申込む場合はこちらの記事「経営者必見!初めて銀行から資金調達するための2つの手順」にも目を通してほしい。
申込みをする金融機関が決まったら必要書類を用意し、融資を申込む。
最初に準備しておく書類は
- 創業計画書
- 設備資金も申込する場合は見積書
である。
日本政策金融公庫の場合は融資の申込後に面談が必要となる。
面談の際は創業計画書の内容について質問をされる。
面談が終了したら1週間から10日程度で審査結果がくることが多い。
銀行や信金の場合は、審査は1週間から2週間程度かかることが多い。
審査が無事に通れば融資実行となる。
まとめ
起業家が創業融資をうけるには、コツコツと自己資金を準備することが大事である。
ビジネスモデルがどんなによくても借りたお金の返済期日を守っていなかったり、税金を滞納しているなど日々の生活でお金に対してだらしないと融資をうけることはできない。
もちろん創業融資をうけるにはビジネスモデルを創業計画書に落とし込み、事業が成功する可能性が高いことを示さなければならない。
事業が成功することでしか返済ができないからである。
本気で自分のやりたいことで事業を起こし、成功するために創業融資が必要ならば、本記事の内容を実践していただくことで、創業融資を獲得できる可能性は格段にあがるであろう。
田烏武
最新記事 by 田烏武 (全て見る)
- 銀行員が御社に来なくなる3つの理由 - 2021年6月10日
- 無利子融資の期限はいつまでなのか? - 2021年6月7日
- 経営者が知っておくべき銀行の貸し渋りについて - 2021年6月1日