経営者必見!初めて銀行から資金調達するための2つの手順
会社経営をしていく上で銀行と付き合っていくのはとても重要なことだ。
なぜなら、銀行から資金調達ができないと会社の経営が苦しくなるからだ。
本日は初めて銀行から資金調達をする方法をご紹介していく。
銀行員時代から現在まで資金調達を100件以上手掛けた実績をもとに資金調達方法をご紹介していくので、 是非実践していただきたい。
1.資金調達する銀行を選定する
資金調達をするには、まずどこの銀行へ資金調達の申込みをするのかを決める必要がある。
これを間違えると資金調達の話も聞いてくれないことがあるので注意が必要である。
1-1.預金取引のある銀行を選ぶ
預金の取引がある銀行から選んでいく。
預金取引とは、売上の入金、給与振込み、仕入先への支払い、定期預金、定期積金などの取引をしている銀行をいう。
預金取引をしているということは、すでに銀行と取引をしているということになるため、資金調達の申込みもしやすくなる。
だが、預金取引のない銀行にいきなり資金調達の申込みをすると、相手の銀行はかなり警戒する。
理由は、今まで付き合ってきた銀行に断られたから申込みをしにきたのではないかと疑うからである。その結果、資金調達の話もまともに聞いてもらえないこともあるのだ。
以上の理由から、まずは預金取引をしている銀行から資金調達をする銀行を選ぶ方が資金調達はしやすくなる。
1-2.地方銀行か信用金庫を優先的に選ぶ
銀行から資金調達をすると言っても、銀行にもメガバンク、地方銀行、信用金庫といった種類がある。
銀行の種類もどれを選べばいいのか迷ってしまった方向けに、その特徴を下の表にまとめてみた。
この中で初めて資金調達する場合は、地方銀行と信用金庫を選ぶ方がいい。なぜなら、地方銀行と信用金庫は地元の地区に特化しているため、中小企業や個人事業主の方をメインの顧客としているからだ。
メガバンクは、融資取引においては大手企業がメインの顧客であるため、最低でも年商10億円以上ないとメガバンクからの資金調達は難しい。
結論として、地元に特化した地方銀行と信用金庫を選ぶことで、スムーズに資金調達の相談ができるようになるということを伝えておきたい。
1-3.預金取引のない銀行から資金調達するには預金取引から始める
預金取引をしていない銀行に資金調達の申込みをする場合は、まずは預金取引から始める。
預金取引をする場合は新規の口座の作成から始めるといいだろう。
また、預金取引をする場合は自分の会社から一番近い銀行を選ぶことが重要である。
なぜなら、銀行は地区ごとに支店をおいているからだ。
銀行が地区ごとに支店をおいているのは、地理的な利便性もあるが、融資先の管理をすることができるためである。融資先が離れたところにあると倒産してもすぐに気づかないことがあるのだ。
そのため、会社から離れた支店に資金調達を依頼した場合は融資先の管理ができないという理由から、会社に近い支店をすすめられることが多い。
2.資金調達の交渉
資金調達を申込む銀行を決めたら、次は資金調達の交渉をする。
交渉には、銀行が見るポイントを抑えた上で交渉していくことが必要となる。
銀行には財務内容を示した書類などを利用してしっかりと説明していく。
資金調達の交渉が資金調達をするうえで最も重要になるため、しっかりと熟読してほしい。
2-1.銀行の担当者に会社へ来てもらう
まずは、銀行の担当者を会社へ招いて交渉する。
会社へ来てもらう理由は、銀行が初めて融資をする場合、会社がちゃんと営業をしているかを確認するからである。
また、銀行員としては会社へ訪問をすることにより、どのような業務を行っているのかを把握できるため、融資の稟議書が書きやすくなる。
2-2.準備書類
次は資金調達を依頼するために、財務内容や会社概要などの書類を準備する必要がある。
財務内容の書類としては、決算書3期分をまず用意する。3期分の決算書を用意する理由は、銀行が過去の財務内容を確認するために最低でも3期分確認するからだ。
また、資金調達の申込みをする時期が決算から6ヶ月以上経過している場合は、直近の業況を銀行に伝えるため、試算表も用意しておく。
事業計画書と資金繰り表もあれば、銀行が融資審査をする際に財務内容を把握しやすくなるため、資金調達はしやすくなる。
また、会社概要がわかるパンフレットがあれば銀行に業務内容を把握してもらいやすい。
銀行はよくわからない業種の場合、融資を控える傾向があるため、パンフレットがない場合は口頭で業務内容を詳細に伝えるようにする。
銀行が業務内容を把握しようとする理由は、業務内容によって資金の流れがある程度わかるためである。
資金の流れとは、資金の使い方である。製造業であれば仕入や人件費に資金が必要であり、飲食業であれば現金商売のため資金があまり必要ない。
銀行が業務内容を把握することには、こういった資金の流れ方を把握するという意味がある。そして、銀行は資金の流れを把握することで融資が必要かどうかを判断しているのだ。
そのため、自分の会社の業務内容は担当者へしっかり説明しなければならない。
2-3.資金調達の理由
資金調達する際は、資金調達する理由を銀行に伝えることが重要である。
なぜなら、銀行は融資した資金が何に使われるかを把握し、返済ができるかを審査するからだ。
企業の資金調達の理由は大きく分けて2つある。
- 運転資金
- 設備資金
運転資金とは、仕入れ、人件費、その他経費など会社の運転に必要な資金のことをいう。運転資金にも1年以内の短期の運転資金と、1年以上の長期の運転資金と2つ種類がある。
設備資金とは、機械の購入や店舗の建築など設備に必要な資金のことを指す。
資金調達のしやすさで言えば、設備資金の方が何に資金が使われるかがわかりやすいため、無理な設備投資でなければ資金調達もしやすいだろう。
運転資金の場合は、資金の使い道が同じ運転資金でもいくつか種類がある。
例えば仕入れの立て替えで資金が必要なのか、赤字で資金が必要なのかといった具合だ。
運転資金の種類についてはここでは割愛するが、今後詳細な記事を作成していく予定だ。
要約すると、資金調達した資金を何に使うのかを、銀行にしっかりと説明することが重要なのだ。
2-4.金額
資金調達をする際は、希望金額を必ず銀行に伝える。
金額は売上の規模、資金の使い道などによって変わってくるが、長期の運転資金の場合は月商の3ヶ月分、設備資金の場合は設備の購入金額がだいたいの目安と考えておけばよい。
2-5.いつまでに資金調達したいか
資金調達を申込む場合は、いつまでに資金が必要かを必ず伝える。
例えば月末に必要なら来月の月末までにほしいといった具合だ。
銀行の融資の申込みから実行まで、おおよそ1ヶ月程度かかるため、最低1ヶ月程度の期間を空けておくといい。
2-6.融資形態
次に、資金調達をどのような融資形態で行うのかを選ぶ。
融資には大きく分けて4つの形態がある。
- 証書貸付
- 手形割引
- 手形貸付
- 当座貸越
証書貸付とは、1年以上の長期の融資で毎月返済が発生するものである。
4つの中では一番オーソドックスな融資形態である。
初めて銀行から資金調達をする場合、まず融資の実績を作る意味で証書貸付を利用してもいいだろう。
手形割引とは、利息を支払い、手形を銀行に買い取ってもらう方法である。
手形を早期に資金化するためによく利用される。
初めて資金調達する場合、手形割引であれば手形が決済される可能性が高いため資金調達がしやすくなる。
手形貸付とは、1年未満の短期の資金に利用される。
仕入れ代金の立て替え資金や賞与のための資金などスポット的な資金で利用されることが多い。
初めて資金調達をする場合、受注がすでにある場合など確実に返済ができる見込みがある場合は手形貸付も資金調達がしやすいので利用してもいい。
当座貸越とは、融資の枠を作っておけばいつでも融資が受けられるものである。
例えば1,000万円の融資枠がある場合、1,000万円の範囲内であれば反復していつでも融資がうけられるというものである。一度枠を作ってしまえば一回、一回、融資を申込む必要がなくなる。
ただし、当座貸越は財務内容が良く、融資実績がある中小企業しか使えないため、初めて資金調達をする際はあまり使うことはない。
これら4つの融資の特徴をふまえて、資金調達の交渉をすると資金調達がしやすくなる。
2-7.返済期間
返済期間はいつまでに返済をするかを伝える。
返済期間は資金調達後の資金繰りに影響が出るため適当に決めてはいけない。
長期の運転資金の場合は7年以内、設備資金の場合は15年以内が目安となる。
短期資金の場合は6ヶ月以内に返済が目安となる。
長期の運転資金を資金調達する場合、資金繰りが苦しい時は返済期間を7年で設定することをおすすめする。返済期間が長ければ長い分だけ毎月の返済を減らすことができるからである。
2-8.返済方法
返済方法は毎月返済か一括返済かを伝える。
1年以上の長期の資金調達の場合毎月返済となり、1年未満の短期の資金調達の場合は一括返済となることが多い。
2-9.初めは保証協会付き融資が借りやすい
初めて資金調達する場合は、保証協会付き融資の方が資金調達がしやすい。
保証協会付き融資とは、融資先が倒産した時に銀行の融資を保証協会が保証してくれるものである。
銀行は新規の融資取引の場合、よほど財務内容が良好な先以外は保証協会付き融資を利用するため、初めての資金調達の場合は保証協会付き融資を利用すると資金調達がしやすくなる。
2-10.金利
金利は財務内容によって大きく変わってくるが、保証協会付き融資の場合1.5%~2.0%程度が多い。
ただし、保証協会を利用した場合、金利以外に1.0%前後の保証料をとられるため、金利以外に保証料も頭に入れておかなければならないだろう。
2-11.審査期間
融資の審査期間は、平均すると2~3週間程度だ。
銀行の審査がスムーズにいけば最短で2週間程で融資実行までできる場合もあるが、融資実行まで1ヶ月程度みておくといいだろう。
資金調達の申込みから1ヶ月以上、何の連絡もない場合は担当者が融資の審査をすすめていない可能性があるため、一度支店に連絡をいれてみるといいだろう。
2-12.契約の締結
融資の審査が無事通ったら、最後に契約の締結を行う。
初めての資金調達の場合は、通常の資金調達よりも書類が多い。
銀行取引約定書や金銭消費貸借契約書などの書類にて契約を締結する。
契約が締結できれば、後は融資の実行日を待つだけである。
まとめ
初めて銀行から資金調達をするためには、資金調達をする際に銀行に見られるポイントを知っておくことが大切である。
銀行が求めることを知らずに資金調達の申込みをするのと、銀行が求めることをふまえて資金調達の申込みをするのでは結果に大きな差がでるからだ。
当然、銀行の求めることに答えることができれば資金調達の可能性があがる。
本日ご紹介したポイントをふまえた上で、是非資金調達の申込みを行ってみてほしい。
田烏武
最新記事 by 田烏武 (全て見る)
- 銀行員が御社に来なくなる3つの理由 - 2021年6月10日
- 無利子融資の期限はいつまでなのか? - 2021年6月7日
- 経営者が知っておくべき銀行の貸し渋りについて - 2021年6月1日