銀行で手形をすぐに資金化できる手形割引という方法!
手形の取引が増えることによって会社の資金繰りは悪化する。
それは手形で代金をもらうと資金が入ってくるのが遅くなるからだ。
売上が増えて手形取引が多くなるのは仕方ないが、手形は一歩間違えると資金繰りの悪化を招きかねない。
そこで本日は手形を早期に資金化できる手形割引という方法をご紹介する。
弊社が実際に行っている方法をもとにご紹介していく。
1.手形割引とは
手形割引とは銀行や手形割引を専門としている会社へ利息や手数料を支払って買い取ってもらい、資金化する方法である。
最近多くなってきている手形の売買をするファクタリングではない。
あくまで手形割引は融資の扱いとなる。
手数料は手形の決済期日までの日数を支払う。例えば手形の決済まで90日ある場合は90日分の手数料を支払う。
通常、銀行の方が手形割引を専門としている会社よりも利息が安い。
手形割引をすることにより、手形の支払期日よりも早く資金化することができるため資金繰りの改善に役立つ。
平成25年2月からスタートしたインターネット上で手形の決済ができる「でんさいネット」の電子手形も手形割引の対象となる。
これを「でんさい割引」という。
次に手形割引の特徴についてみていく。
1-1.銀行の手形割引の特徴
銀行の手形割引の特徴は銀行融資になるため、申込人の財務内容や手形の銘柄など総合的に返済ができるかを審査して行う。
手形割引は手形が決済されれば融資が返済になるため、銀行にとってリスクが低く、銀行融資の中で最も資金調達がしやすい。
新規の手形割引の取引の場合は1ヶ月程度かかるが金利はおおよそ年利で1.0%から4.0%程度である。
ファクタリングは1回の手数料10%以上が多い(年換算120%)ため、手形割引の方が時間はかかるが、利息は手形割引の方が断然安い。
また、手形割引の融資枠を作っておけば、融資枠の範囲内なら翌日にも手形割引ができる。融資枠については後ほどご紹介していく。
銀行は手形の信用度の調査のために帝国データバンクや東京商工リサーチといった信用調査会社のデータの点数を参考にしている。
一般的に大手企業の手形の方が点数は高く、中小零細企業の方が点数は低い。
1-2.手形の支払い先が倒産したら、手形を買い戻さなければいけない
手形割引をした場合、手形の支払い先が倒産して手形が決済されなかったら、割引した手形を買い戻さなければいけない。
買い戻すとは簡単に言えば割引いてもらったお金を返すということだ。
資金繰りが苦しい場合、手形を買い戻せなくて連鎖倒産なんていうこともよくある。
そのため、手形割引をする場合は手形を買い戻すこともあるため、財務内容が悪そうな会社の手形はなるべくもらわないようにすることが重要だ。
1-3.電子手形の手形割引の特徴
電子手形は㈱全国電子債権ネットワークが運営する「でんさいネット」を活用することで扱えるようになる。
電子手形を手形割引する場合、通常の手形割引よりも利便性が高まる。
通常の手形割引の場合、手形は1枚の場合が多いため手形の金額全額を割引するしかなかった。
しかし、電子手形の手形割引の場合は手形そのものが電子化されているため、分割して手形割引ができるのである。
例えば1,000万円の手形がある場合、資金的に全額割引必要がなくても1,000万円全額を割引しないといけなかったが、電子手形の場合500万円だけ割引といった具合に分割して割引ができるようになった。
でんさいネットを活用することで資金繰りの利便性があがるため、積極的に活用しよう。
2.銀行で手形割引の融資をうけやすくするポイント
銀行にとって手形割引はリスクが低い融資のため、基本的に資金調達がしやすい。
ここからは銀行の手形割引をさらにうけやすくするポイントについてご紹介していく。
2-1.保証協会付きの方が資金調達しやすい
銀行で手形割引をする場合、保証協会付きの手形割引とプロパーの手形割引がある。
プロパーとは保証協会がついていない手形割引のことである。
保証協会付きの手形割引の場合は利息の他に保証料が別途かかる。
プロパーの手形割引の場合、財務内容によって担保を要求される場合がある。
初めて銀行から資金調達する場合は保証協会付きの方が資金調達はしやすくなる。
銀行から初めて資金調達する経営者の方は「経営者必見!初めて銀行から資金調達するための2つの手順」の記事も参考にしてほしい。
2-2.スポットの手形割引の方が融資はうけやすい
銀行の手形割引には、スポットの手形割引と常時、手形割引を使う手形割引の2つ種類がある。
スポットの手形割引は、単発の仕事で手形がまわってきた場合に利用する。
手形が決済されれば返済が終了となるため、銀行にとってリスクが低いため融資をうけやすい。
一方、常時取引先から手形がまわってくる場合は手形割引の融資枠を設定することが多い。
例えば1,000万円の手形割引の融資枠がある場合、取引先から手形がまわってきた時に1,000万円の範囲内であれば、いつでも手形割引ができるものだ。
手形が決済されれば融資枠に空きがでるため、融資枠の範囲内で反復利用が可能となる。
手形割引の融資枠があると融資実行まで最短当日でもできるため、常時取引先から手形がまわってくる場合は融資枠を依頼する方がいい。
融資枠を設定するといつでも手形割引ができるが、銀行からするとスポット的な手形割引よりもリスクが高くなるため、融資はうけずらくなる。
2-3.手形割引の融資枠を計算しておく
銀行と手形割引の交渉をする場合は手形割引の融資枠を事前に計算しておくと交渉が上手くいくだろう。
銀行が融資枠の金額を決める際に使っている計算方法は
である。
計算式の内容を簡単に説明すると売上の何割を手形で回収し、手形が決済されるまで何ヶ月かかるのかということである。
例えば平均月商が1,000万円、手形の回収割合が50%、手形の決済まで3ヶ月かかる場合、
平均月商1,000万円×手形回収割合50%×手形サイト3ヶ月
=手形割引融資枠1,500万円
となり、融資枠は1,500万円が妥当であると計算される。
この計算式をもとに自社の手形割引の妥当な金額を算出し、銀行と交渉すれば融資はうけやすくなる。
2-4.銘柄がいい手形は割引してもらいやすい
銀行は手形割引をする時に手形の銘柄がいいと手形割引をしやすくなる。
銘柄とは手形の支払い先の会社である。
トヨタ自動車などの大手企業の手形の場合、申込人の財務内容が多少悪くても、銀行は喜んで手形割引に応じてくれるだろう。大手企業の手形は信用度が高く、間違いなく決済されるからだ。
大手企業の手形がまわってきたら銀行で手形割引をしやすくなる。
2-5.経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)へ加入しておく
銀行で手形割引を申込む時は.経営セーフティ共済へ加入しておくと審査が通りやすくなる。
経営セーフティ共済とは毎月掛け金をし、取引先が倒産した場合に掛け金の総額の10倍もしくは回収困難になった金額(最大8,000万円)のいずれか低い方の融資がうけられる制度である。
例えば手形割引をした手形が決済されずに、銀行から買い戻しを請求された場合、通常簡単に買い戻しの資金は用意できない。
そのため、経営セーフティ共済の融資制度を利用し、買い戻しのための資金を調達する。
経営セーフティ共済に加入しておくと銀行は手形の買い戻しが万が一発生しても、経営セーフティ共済の融資制度で返済ができると判断するため、融資がうけやすくなる。
まとめ
手形割引とは手形が早期に資金化できるため、資金繰りは改善される。
銀行で手形割引をうけやすくするポイントをもう一度確認しておく。
・保証協会付きの方が資金調達しやすい
・スポットの手形割引の方が資金調達しやすい
・手形割引の融資枠を計算しておく
・銘柄がいい手形は割引してもらいやすい
・経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)へ加入しておく
となる。
銀行に手形割引の申込みをする際には、本記事の内容を参考にしてほしい。
田烏武
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