税金滞納をしてコロナ融資がうけられない時の4つの対処法
税金を滞納しているため、銀行や日本政策金融公庫からコロナ融資を断られてしまった。 しかし、仕入れや人件費の運転資金が今月どうしても必要である。
税金を滞納していても何とかコロナ融資をうける方法はないだろうか、と経営者であるあなたはお考えではないだろうか。
本日は税金滞納をしていて、銀行や日本政策金融公庫からコロナ融資を断られた場合の対処法についてご紹介していく。
弊社がクライアント様に実際にお伝えしている内容をご紹介していく。
1.税金を滞納した場合のコロナ融資について
基本的に税金を滞納している場合、銀行融資、日本政策金融公庫などの金融機関では融資は難しい。
それはなぜかというと、銀行融資の場合は保証協会を利用することが多く保証協会が税金を滞納している中小企業に基本的に保証はしないからである。
保証協会や日本政策金融公庫は実質、国が運営していて、その原資は税金から捻出されているため、税金を納付していない中小企業は融資をうけることが難しいのである。
稀にではあるが、業績がいい中小企業で税金が特別な理由で納付できていない場合、銀行のプロパー融資で融資をうけられることもある。
だが、プロパー融資は業績がいい中小企業のみがうけられる融資であり、業績がいい中小企業は特別な場合を除いて税金をきちんと納付している。
そのため、税金を滞納している場合は基本的に銀行や日本政策金融公庫で融資をうけることが難しいのである。
ただし、弊社のクライアント様で消費税を滞納していたが、日本政策金融公庫でコロナ融資がうけられたケースもあるため、絶対にうけられない訳ではない。
2.税金を滞納してコロナ融資を断られた時の対処法
では、税金を滞納していることで銀行や日本政策金融公庫の融資を断られた場合はどのように対処すればいいのかご紹介していく。
2-1.銀行カードローンで資金調達する
銀行カードローンとはメガバンク、地方銀行、信用金庫などが取り扱っているカードローンである。
ほとんどの金融機関でカードローンは取り扱っている。
一般個人用のカードローンはあくまで生活資金用なので、経営者の方であれば銀行カードローンの事業者用を利用するのがいいだろう。
事業者用のものは経営者や個人事業主が利用できるものである。
事業者用でも法人名義で借りるものは債務超過や税金が未納の状態だとそもそも審査に申込めないものが多いため、経営者個人での名義で事業者用のカードローンを利用するといいだろう。
また、次に銀行から融資を申込む際に、法人名義のビジネスローンがあると銀行に資金繰りが危ないのではないかと警戒され、税金が完納できていたとしてもビジネスローンがあることを理由に審査が通りにくくなるため、経営者個人で借りて会社に貸し付ける方がいいだろう。
経営者個人での名義で事業者用のカードローンを利用する場合は、できれば融資取引がない銀行で申し込みをする方がいいだろう。
それは、融資取引がある銀行で借りてしまうと今後の融資審査に影響してくる場合があるからである。
銀行カードローンは金利が銀行融資よりも高いので、長期的に利用すると支払利息が増加し資金繰りを圧迫するため、基本的に短期の利用を強くお勧める。
では、銀行カードローンの事業者用のメリットとデメリットについてご紹介していく。
2-1-1.銀行カードローンの事業者用のメリット
銀行カードローンの事業者用のメリットとしては
- 銀行が取り扱っているので信頼できる
- 総量規制がない(年収の3分の1以上の借入が可能)
- 金利がノンバンクと比較すると安い
- 審査までの時間が1週間以内には出る
銀行カードローンの事業者用は銀行が取り扱っている商品のため、信頼がある。
また、銀行カードローンの事業者用は事業用に利用するため、総量規制がない。
総量規制とは2010年に制定された返済能力以上に借入ができない制度である。
それまで消費者金融などから返済能力以上の借入をしてしまった方が増え返済できなくなる事例が多くなってしまったため、年収の3分の1以上借入ができない制度が制定された。
しかし、事業用の資金として年収の3分の1以上借りられたとしても、現実的に経営者個人での返済が苦しくなってしまうため、注意する必要がある。
金利については銀行カードローンのビジネス用は15%程度である。
ノンバンクの金利は18%程度が多いため、銀行カードローンの事業者用の方が金利は低い。
審査までの時間は1週間以内にはほとんどの銀行で結果が出るため、通常の銀行融資よりは早いが、ノンバンクよりは若干審査スピードは遅い。
2-1-2.銀行カードローンの事業者用のデメリット
銀行カードローンは通常の銀行融資と比較しても金利が高い。
銀行融資の場合、高くても4%程度であるが銀行カードローンの事業者用は15%程度がほとんどである。
カードローンの返済方法は元利均等返済といって毎月同じ金額の返済となるが返済の始めの方はほとんどが金利の返済である。
例えば上図のように借入金額100万円、返済期間10年、金利14.6%で元利均等返済の場合、毎月の返済額は約1万6千円ずつであるが、返済初月の内訳は元金部分が約4千円、利息部分は約1万2千円となり返済額の4分の3が利息部分である。
だんだん、利息部分の割合が減り元金部分が多くなっていくが、10年間の返済総額は約190万円となり、借りた金額の倍近くを返済しないといけない。
これがノンバンクの18%の金利だと、毎月の返済額は約1万8千円で初月の元金部分は約3千円、利息部分は約1万5千円となり、10年間の返済総額は約217万円となり、14.6%と比較すると返済総額で30万円近く違ってくる
そのため、金利は少しでも安い方がいいのである。
長期的に借りる場合は金利の支払いが増加するため、どんどん資金繰りは悪化していく。
また、銀行カードローンはその銀行で来店して口座の作成を行わないといけないため、ノンバンクと比べると手間がかかる。
2-2.ノンバンクで資金調達する
銀行や日本政策金融公庫から融資を断られた場合はノンバンクから融資をうける方法がある。
ノンバンクとは消費者金融、事業者金融、クレジット会社、信販会社などの銀行以外をいう。
ノンバンクでも事業用の貸付や個人での貸付を行っている所など様々な会社がある。
では、ノンバンクで融資をうけるメリットとデメリットについてご紹介していく。
2-2-1.ノンバンクで融資をうけるメリット
ノンバンクで融資をうけるメリットとしては
- 銀行のカードローンで断られた場合でも融資がうけやすい
- 審査のスピードが速い
- 口座作成が必要ない
ことである。
一番のメリットは銀行のカードローンで断られた場合でも融資がうけやすいということである。
ノンバンクでは銀行から借りられない顧客が申込みに来ることが多いため、貸倒れのリスクをとる代わりに金利を高く設定し、銀行が融資をしない顧客に融資をしている。
ノンバンクの場合、審査のスピードは銀行と比較しても格段に早い。
審査から結果がでるまでの時間は会社によってと若干変わってくるが、数日以内の会社がほとんどである。
早い所であれば、その日のうちに審査の結果がでる所もある。
銀行カードローンのように来店して口座の作成がない場合がほとんどのため融資実行までの期間も数日以内にできる場合もある。
銀行から融資を断られてから仕入れの支払いや社員の給料など次の支払いまでの時間があまりないことが多い状態であれば、非常に利便性が高いといえる。
2-2-2.ノンバンクで融資をうけるデメリット
ノンバンクで融資をうける一番のデメリットは金利が高いということである。
銀行や日本政策金融公庫で融資をうける場合、金利は高くても4%程度であるがノンバンクの金利は4%から18%程度と記載されているが、実際は18%程度の金利が多い。
ノンバンクは貸倒れリスクが高い顧客が申込みに来ることが多いためその分、金利を高く設定している。
銀行や日本政策金融公庫で100万円を4%で借りた場合は年間で約4万円の利息で済むが、ノンバンクで100万円を18%で借りた場合は年間約18万円となり、年間で14万円の差がでるので7年返済となれば利息の差額は約98万円もノンバンクの方が高くなる。
利息の支払いが多くなればそれだけ資金繰りは悪化することになる。
ノンバンクで融資をうける際は長期で借りるのではなく、返済原資が見込める短期で借りるのが最も効果的な使い方である。
2-2-3.経営者個人で借りて会社に貸し付ける
ノンバンクを活用する場合は経営者個人で借りて会社に貸付をした方がいい場合が多い。
それは、銀行はノンバンクからの借入があるとそれだけで融資を断る場合があるからだ。
ノンバンクからの借入があるかどうかは、会社名義で借りた場合、決算書に載ってしまうため、銀行にバレてしまう。
経営者個人で借りて、会社に貸付をした場合は決算書にノンバンクの名前は載らない。
そのため、ノンバンクから借りるにしても、経営者個人で借りて会社に貸付をした方がいいのである。
会社名義で借りても決算前までに返済でき、決算書にのらないのであれば問題ない。
また、銀行から融資を絶対にうけられないと判断した場合は会社名義で借りることもある。
その代わり会社名義で借りた場合、ノンバンクの融資が完済するまで銀行からの融資はうけられないことが多い。
その上、高い金利(18%前後)で返済していかなければならないため、利息負担が重くなり資金繰りが悪化することが多い。
経営者個人で借りる場合でも法人で借りる場合でも、ノンバンクを利用する際はできる限り短期で借りることが重要である。
2-2-4.銀行カードローンの事業者用、ノンバンクで税金を完納して銀行から融資をうける
もし、滞納している税金の金額が銀行カードローンの事業者用かノンバンクを利用してすべて完納できる場合は銀行から融資をうけられる可能性がある。
もちろん、銀行の担当者ときちんと相談した上で、税金をすべて納付できたら銀行融資を行ってくれるかを確認する必要がある。
もし、リスケジュールをしていない状態で税金の完納を条件に融資がうけられるなら、銀行カードローンの事業者用かノンバンクを一時的に利用して銀行融資がうけられたら、銀行融資で銀行カードローンの事業者用かノンバンクに返済する方法が最も賢い利用方法である。
もしも税金が完納できず、長期的に銀行カードローンの事業者用やノンバンクを利用する状態ならば、安い金利の銀行融資を高い金利の銀行カードローンの事業者用やノンバンクで借りて返済していることになるので次項でご説明するリスケジュールを利用する方がいいだろう。
2-3.リスケジュールをする
リスケジュールとは毎月の返済を減額できる方法である。
例えば、毎月の返済が100万円ある場合、返済額をゼロにすることができる。
毎月の返済をゼロにすることができれば、それは100万円の融資をうけた場合と同じ効果が得られる。
そのため、リスケジュールをすれば余分な借入を増やさなくてすむ。
税金を滞納に銀行融資を断られて且つ銀行カードローンやノンバンクを利用しても税金を完納できない場合はリスケジュールをした方がいいだろう。
リスケジュールをする場合は1ヶ月程度時間がかかり、銀行に経営改善計画書などの書類を提出しないといけないため、数日以内の資金繰りの対応策には向いていない。
では、次にリスケジュールのデメリットについてご説明していく。
2-3-1.リスケジュールのデメリット
リスケジュールのデメリットは、リスケジュールをしている期間は追加の融資をうけるのが難しいということである。
しかし、すでに税金の滞納を理由に銀行融資を断られているならリスケジュールをしても問題ないだろう。
リスケジュールをすると固定金利で借りていない融資がある場合は金利をあげられることがある。
金利をあげられたとしても4%以内には収まるため、銀行カードローンやノンバンクの金利に比べれば安い。
リスケジュールについては「元銀行員が教える!1ヶ月で資金繰りを改善できるリスケジュールという方法」で詳細に解説しているのでリスケジュールを検討している方は参考にしてほしい。
2-4.ファクタリングをする
ファクタリングとはファクタリング業者に売掛債権を買い取ってもらい現金化する手法である。
ファクタリングは売掛金を現金化する手法のため融資にはならず、税金滞納やリスケジュールをしている場合でも利用できることが多い。
ファクタリングはファクタリング業者、事業者、売掛先の3社間で行うものと、ファクタリング業者と事業者の2社間で行うものがある。
3社間でファクタリングを行う場合は上図の通りとなる。
3社間の場合、手数料は売掛債権額の1%から5%程度であり年間に換算すると12%から60%程度になる。
また、3社間の場合は売掛先に通知がいくことになるため、取引先に資金繰りが悪化していることを感づかれる場合が多い。
2社間でファクタリングを行う場合は上図の通りとなる。
2社間の場合は事業者に直接売掛金が入り自社の運転資金に売掛金を使ってしまうリスクがあるため、3社間よりも手数料は高くなる。
2社間でのファクタリングの手数料は売掛債権額の10%から20%程度が多い。年間に換算すると120%から240%と非常に高い手数料となる。
そのため、ファクタリングも銀行カードローンやノンバンクと同様に長期の利用をしてしまうと手数料の支払いで資金繰りの悪化を招いてしまうことが多い。
ファクタリングを利用する際は、単発での利用を強くお勧めする。
2-4-1.ファクタリングのメリット
ファクタリングのメリットは
- 銀行融資を断られても利用できる
- 税金滞納していても利用できる
- リスケジュールしていても利用できる
- 売掛債権の範囲内で資金調達できる
- 審査までのスピードが数日と早い
である。
ファクタリングは融資ではないため、安定した売掛金があれば資金調達できる。
また、ファクタリングは融資ではないため、決算書には借入として計上されない。
安定した売掛金があり、取引先が大手などの信用度の高い会社であればファクタリングを利用しやすくなる。
2-4-2.ファクタリングのデメリット
ファクタリングのデメリットとしては
- 手数料が高い
- 一度利用すると継続に利用してしまう場合が多い
- 売掛金に債権譲渡登記が必要な場合がある
である。
ファクタリングの手数料は銀行カードローンやノンバンクの金利よりも高くなる場合が多い。
銀行カードローンやノンバンクの場合は高くても年利18%以内ですがファクタリングの場合は、年利換算をしたら3社間取引で12%から60%、2社間取引で120%から240%の手数料となる場合が多い。
例えば2社間でのファクタリングにて売掛債権500万円を手数料10%で買い取ってもらった場合の手数料は50万円である。
1度の利用だけであれば手数料は50万円ですむが、資金繰りが悪化している中小企業は再度、売掛債権を現金化しなければ資金繰りが回らなくなる場合が多い。
毎月50万円の手数料を支払っていくと、年間では600万円の支払手数料となる。
そのため、ファクタリングを利用する場合は単発で利用しなければ支払手数料が高額になり、資金繰りはまわらなくなる可能性がある。
どうしても、資金調達方法がなくファクタリングを利用する場合は単発での利用が効果的である。
2-4-3.ファクタリングで資金調達して税金を完納し、銀行から融資をうける
税金を理由に銀行融資を断られている場合、ファクタリングで資金調達し税金を完納して銀行から融資をうけられる方法もある。
その場合は銀行の担当者ときちんと事前に打ち合わせをし、税金が完納できれば銀行から融資をうけられるかを確認しておく。
基本的な考えとして安い金利で借りられる銀行融資をうけられるようにファクタリングを利用することが重要である。
税金滞納だけが融資をうけられない理由ならば銀行カードローン、ノンバンク、ファクタリングを短期で利用し、税金を完納して銀行融資をうけられるようにすることが資金繰りの改善に最も役立つ。
3.毎月の収支を改善することが根本的な解決策
今まで税金の滞納をして融資がうけられない時の対処法をご説明してきましたが、根本的な解決策は毎月の収支を改善することである。
コロナの影響で業績が悪化している場合でも、基本的に借入ができる金額には限度がある。
そのため、収入よりも支出が上回らないようにすることが最も重要なことである。
収入の方が支出よりも多くなれば、現金が減ることはないからである。
まずは、資金繰り表を作成し、毎月の収支を把握する事から始められることをお勧めする。
資金繰り表の作成方法に関しては、こちらの記事【エクセルのフォーマット付き】初心者でも1日で資金繰り表の作り方がわかる6つの手順で詳細にご説明しているので、参考にしていただきたい。
税金を滞納している場合、事業自体が赤字のケースがほとんどである。
赤字の場合は、そもそも赤字を解消しなければ、銀行カードローン、ノンバンク、ファクタリングを活用して一時的に資金調達しても、また資金が不足するため問題を先送りにしたに過ぎず、根本的な解決策にならない。
赤字を改善しない限り、借金に借金を重ね最後には、首が回らなくなってしまう。
そのため、赤字を解消することが資金調達するよりも重要なことなのである。
まとめ
税金を滞納して銀行融資がうけられない時の対処法としては
- 銀行カードローンの事業者用を利用する
- ノンバンクを利用する
- リスケジュールを行う
- ファクタリングを利用する
となる。
銀行融資以外で資金調達を行うと金利や手数料が非情に高いため、銀行カードローン、ノンバンク、リスケジュール、ファクタリングを活用し税金を完納して、銀行融資をうけられるようにするかが資金繰りを改善させるうえで非常に重要となってくる。
今回取り上げた対処法は緊急時のもののため、コロナ禍における一時的な解決策である。
事業自体がそもそも赤字の場合は、早期に赤字を解消させることが根本的な解決方法であるため、そのことをご認識していただきたい。
田烏武
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